もう一つ面白い問題がある。アメリカ合州国Illinois州Evanston,
Northwestern大学Dundurs教授(1980年頃)の`Elasticity'の
講義ノートにある問題である。図-I.2のように,
長さの棒の左端が温度
になっていて,
この温度を0度から徐々に上げていくことにする。
右の壁の温度は
度で,
の
状態での棒の右端と右の壁との間には隙間
があるものとする。
いわゆる1次元のHookeの法則式(3.116)に,
非弾性ひずみ(塑性ひずみと同じようにI.1扱っていい)として温度膨張ひずみを
考慮すると,Hookeの法則は
になる。ここには温度膨張ひずみであり,
は初期状態からの
温度増加分である。
はYoung率で
は線膨張係数
であり,材料の定数である。
右端がまだ壁に接触する前は,棒中の温度は一様で
に等しい。
右端が壁に接触したときには,伸び変位が
になったときなので,
そのときの温度
は
のように求められる。
一方,を非常に大きな値に固定して,
かつ右端が壁に接触した状態を保持し続けられた場合には,
定常状態では図-I.2の一番下のような
線形の温度分布になるだろう。したがって
であり,式(I.13)から
となる。このとき,棒の途中には外力は存在しないので,
応力は方向に一定の圧縮になるから
とすれば
となる。この温度膨張ひずみによる棒の伸びは隙間のに等しいから
という関係が成立している。
そこで,左壁の温度を徐々に下げていき,右端が壁から離れる時点の
温度を求めると,それは
のときに相当するので,上式から
となり,式(I.14)のの2倍になっていることがわかる。
この結果は面白いでしょう。つまり,では
の間には,一体何が起こっているのかということだ。
多分容易に想像がつくと思うが,
で右端が接触した途端
右端の温度は0度になるから,熱伝導によって
棒はすぐに縮んで接触を失うことになる。
そこで,左壁の温度を
から
だけ上げ続けることにして,
棒が(理想的に)右端で壁に接触して,棒に圧縮応力が生じた状態を
保持できたとすると,棒中の温度分布は一定から線形分布に徐々に変化していく。
もしそういうことが可能なら,その熱伝導問題は,
と近似できる場合
![]() |
(I.16) |
という問題を
![]() |
(I.17) |
の条件で解けばいい。
しかし,どんなに急に温度を上げても軸力は負になり,
結局右端では接触・非接触の振動が生じることになる。
「どんお」問題についての講義ノート:省略