つり合い式の基本的な弱形式は,式(D.7)のつり合い式から
と書くことができるから,部分積分をして境界条件式(D.8)を代入すると
となる。これに式(D.3)を
考慮して式(D.5)を代入すると,最終的な仮想仕事式
が
となる。内力仮想仕事項は式(D.3)を考慮すると
とも表すことができる。
式(D.12)を見る限り
は要素内一定,
は1次
多項式でよさそうだ。
したがって式(D.3)を考慮すれば
には2次多項式で
いいことになる。
これで四つの未定係数で
,
を表すことができ,節点での
連続条件を満足すべき四つの
,
を係数とする
変位関数が仮定できる。
しかし式(D.13)を見ると,
これでは被積分関数第2項の
の微係数が落ちてしまう。
だからといって
に1次の多項式を仮定すると
未定係数の数が一つ増え,
後述の高次要素と同じような煩雑さを伴う。
ただこの第2項は曲げの項であり,
の貢献は
主に第1項であろうから,
思い切ってこの最も簡単な変位関数を採用して試してみよう。
つまり
と置く。これを式(D.13)に代入して剛性行列
を求めると
となる。
ところでTimoshenko梁理論はBernoulli-Euler梁の拡張理論で
あり,
の極限で各基礎式は初等梁理論のそれに整合する
はずである。しかし式(D.14)の剛性
行列は,
の極限で式(5.24)にはならない。
しかも式(D.14)を用いた有限要素解析による
数値解は,要素数を非常に多く用いなければならない等,
厳密解への収束が非常に遅い[38]こともわかっている。
たわみ
で表したつり合い式(D.9)を見ると
明らかなように,最も重要な項は初等梁理論と同様,たわみ
についての4階の微係数であった。したがって,
に対しては3次の
多項式を用いるのが望ましいことは明らかであったが,前節では
故意に簡単な要素を誘導してみた。
そこでここでは,
については定数として
と置いてみよう。ここに
は式(5.21)で定義した
多項式であり,新たに
と定義した。
ここでも
を定数と置いているから,式(D.13)の
被積分関数第2項の
の微係数が落ちてしまう。しかし,
式(D.15)の
の方の
変位関数表現に
の項があることから,
少なからずせん断変形の影響がこの第2項にも及ぶことが期待できる。
また
を1次多項式にしても,実は求められる剛性方程式が同じに
なることは,ちょっと面倒な演算で示すことができる。
式(D.15)を式(D.12)に代入して「要素」剛性方程式を
求めると
となる。
なお簡単のためにこの章では,括弧無しの太字で行列を表している。
ここで
は式(5.22a) (5.24)で
定義された初等梁の剛性行列であり,
(
=1〜4)は
式(5.22b)で定義された等価節点外力である。
や
の
具体的な表現は省略するが
と定義した。なお簡単のためにこの章では括弧無しの太字で行列を
表している。剛性方程式(
)の第5行目の式は,境界条件から判断して
左辺の外力に相当する部分が零になっており,これは要素剛性方程式の
レベルでの余剰な自由度
に対する付帯条件と
考えなければならない。つまり式(D.8)の境界条件
から判断して
は要素間で連続になる必要が無いから,
式(
)の形で
を剛性方程式に残しておく必要はなくなる。
したがって,式(
)第5行目から
を計算してしまい,
それを残りの行に代入して剛性行列の縮約を行う。第5行目の式は
となる。便宜上
と置いた。式(
)を式(
)の上4行右辺に代入すると

であり,
は式(4.85a)で定義したパラメータ
である。
この
がせん断変形の影響の程度を代表するパラメータであり,
せん断変形を無視する場合には前述のように
せん断抵抗係数
と考えればいいから,
と
なる。
のとき,式(D.18c)は
式(5.24)の初等梁理論の剛性行列に一致する。
実は式(D.17)はマトリックス構造解析
の基礎式としての
厳密な剛性方程式に一致する。したがって当然のことであるが,
式(D.9) (D.10)で表した支配方程式から
有限要素定式化しても同じ剛性方程式(D.17)が求められる。
この節を高次要素と題したが,以上のような意味ではこの要素の方が
有限要素法として適正なものと言えよう。